ハチワレ処

御転婆大使館ノスケのブログ

曲の作り方③〜サビを仕上げる〜

前々回〜前回までの話

<前々回>

・曲は誰でも作れる時代になっています(売れる曲とは言ってない)

・自分のため、自分たちのためだけの曲が増えてもいいですよね

・曲作りを身近に感じてもらって自分で作れる人を増やしてみたい

・アイドルからの実際の依頼曲をもとに作り方を解説してみます

・まず歌詞の素材を集めます

・そこから歌詞になりそうな言葉をピックアップします

sabutodanna.hatenablog.com


<前回>

・サビっぽいワードの選び方

・とりあえず口ずさむ

・曲のイメージが湧く

・参考になる曲を探す

・参考曲を元に改めてサビの骨格を作る

sabutodanna.hatenablog.com




作曲パターンは人それぞれ・ケースバイケース


①最初はサビっぽいワードを適当に口ずさむ

②なんとなくイメージに近いジャンルを見つける

③参考になる曲を具体的に探す

④参考曲を元にサビの骨格をきちんと作る

⑤サビ作りあげる←イマココ です。


これが正当なやり方でも王道のやり方でもなく、ケースバイケースではあります。

そもそも、歌詞が先にあって作る詞先(しせん)タイプの人と詞はなしで、曲から先に作る曲先(きょくせん)タイプの人で分かれることもあります。
僕はどちらかというと詞先なんですが、詞とメロディーを一緒に作っていくのが一番作りやすいです。


例えば作曲コンペとかだと、参考曲が最初からあって、「こういう曲で作ってください」みたいな形がわりと多いので、①②③がないこともあります。
でも最近は自由に作ってくださいみたいなケースも増えているので、そういう場合は①からやることもありますし、人によってはいきなり③からやったり、そもそも参考曲などなしで作る人もいると思います。
それとコンペの場合は、歌詞もないことがほとんどなので、ラララとか、仮の歌詞を入れて作ったりします。


僕もいきなり歌詞にメロディーをつけていくこともわりとありますが、今回の場合、口ずさんだら戦隊モノっぽいなと思って、思い切ってそっちに寄せようというコンセプトにしたため、まず参考曲を探してからメロディーをきちんと作ることなりました。
これで僕がわざわざ調べるまでもないくらい戦隊モノの曲が大好きだったり、過去にそういう曲を作っていれば、参考曲を探す工程は必要なかったりします。


ちなみにAKB系をはじめとするアイドル曲やジャニーズ系、シンガー系などのJ-POPの曲の参考曲は、基本的には洋楽がほとんどです。なので、洋楽を沢山聴いている人の方が引き出しは多いかもしれません。洋楽に限らず、やはり曲を普段から沢山聴いている人はアイディアの量は豊富な気はします。

 

サビの最後を作る


ということでサビを作っていきます。


まず楽器などは持たず、手でリズムを取りながら、サビの最後に来る「撃笑戦隊、イクミンジャー!」を色んな言い方で言ってみます。
何度も繰り返してるうちに、一番自分の中でしっくり来る言い方ができたら、録音アプリなどで録音します。この時、ドラムとか何かしらの楽器とかが聴こえているようだったら、それも手や口でなんとなくわかるように録音します。


例えば、「撃笑戦隊、イクミンジャー!」という録音と、そこの歌の部分に入りそうな「ダダッ!ダダッ!ダ・ダーダダ!」というドラム的なベース的な音を口で言って録ります。歌だけ録ると、後で聞いた時にキーがわからなかったりリズムがわからなかったりするので。

 

でも、恐らくこの段階でうまいことメロディーにならない人、頭の中に何も流れない人も沢山いると思います。
そういう人は、まず一段階手前のところから始めるといいので、その方法は次回ご紹介します。

 

サビの最初を作る


サビの最後の"撃笑戦隊イクミンジャー"のメロディーができたら、またサビが繰り返される想定で、勢いをつけたままサビに入るイメージでサビの最初の歌詞を考えます。


前の「イクミンジャー」の流れでいくと、レッツ・ゴーはちょっと音数が足りない感じがしてしっくり来ない。
Let's goよりもHere we goの3語の方が1、2、3!という感じでハマる感じがします。

ただHere we goだと、最初の音が [h] という音で、これは無声音と呼ばれる音で文字通り音が無くてあまり力が入らない感じはするので、1回くらい変則的に入れる分にはいいんですが、毎サビの頭で持ってくるのはちょっと避けておいてもいいかなという気がします。

Let's goに戻って、例えばLet us go(レットアスゴー)とかにすれば3音にはなりますが、言いにくいし聴き慣れないし語感も悪いのでイマイチです。
なのでここは、共通のGoだけは残すようにして、”Let's go”を”O.K. Go!”に変更してみました。


これにメロディーをつけます。
ここは、1、2、3に合わせて、上昇していくようなメロディーがいい気がしたので、そういうイメージで考えます。
ここで「O.K.Go!」のメロディーがなんとなく決まったら、それを繰り返して歌います。


そうするとまた、次に行きたい方向がなんとなく見えて来ます。見えて来ない場合は、できる限りのイメージをします。
イメージできなければ、参考曲を聴きます。
参考曲を聴いても湧かなければ、また戦隊モノの曲全体に戻ります。


というように、行き詰まったらどんどん来た道を引き返して拾い忘れているアイテムを回収するつもりで、とにかくあらゆる材料を集め直します。



と、さもそれっぽいことを書いていますが、僕も音楽を長年やってきていながらこれが意識してできるようになったのはつい2年ほど前です。


それまでは曲を作る必要に迫られていなかったのもあるんですが、丁度2年前に僕が加藤さんのマネジメントをしていた時に、水戸市のラーメンまつりへの出演オファーを受けて、そのお祭りに出演するときにお祭りのテーマソングを作って披露した方が、ただ自分の持ち曲を歌いに行くだけよりイベントとの一体感が出て喜んでもらえるんじゃないか、という思いつきで、突然使命感に燃えて曲を作ったのがはじまりです。


そこから、基本的にお祭り系のものへのオファーを頂いた時には、どれだけ時間がなくても”加藤育実なりのテーマ曲”というものを作って出演させて頂きました。
勿論、加藤さんのパフォーマンスがあったから以外の何者でもありませんが、その時のイベントの盛り上がりにラーメンソングも多分少しは役に立って、今加藤さんは水戸のラーメン大使にして頂いています。




話が逸れてしまいましたが、僕はこの時、加藤さんが「O.K.Go!」とステージで歌っているイメージをしていて、Go!と言った後に観客が「Go!」とか「Yes!」とかメロディーではなく合いの手のようなものが入っているようなシーンが見えた気がしたので、「O.K.Go」の後はメロディーを入れず、1拍、休符にすることにしました。


で休符にするとまた次の音がボヤッと見えます。


参考曲のマジレンジャーが、マジ!マジ!マージレンジャー!というメロディーで、繰り返しながら上昇していく感じなので、同じような流れ方にするために、Goを連続で使おうかなと当たりをつけます。


最初1、2、3のリズムに合わせてO.K. Goと四分音符のリズムなので、次は少し細かくした方がバランスが良さそうなのと、勢いがつきそうです。

なので、イクミンジャーの方で却下になったカトウジャーのカトウを使い、KATO Goを2拍に詰め混みます。そうすると一応サビに名前が全部入って、サビの面構えとしていい感じな気がします。


と、こんな感じで、前半は「O.K.Go!KATO Go!KATO Go!」としました。


サビを仕上げる


細かくなってしまうのである程度、端折りますが、ちょっと変わった音楽が好きとかでなければ、普段耳にしている曲の小節数というのは、基本は4小節とか8小節とかのメロディーをベースに、必要に応じてそれが繰り返されたり少し足されたりするというのがオーソドックスです。

なので、4小節のメロディーがある程度のブロック(固まり)としてできると、その後もブロック単位でイメージがついてくることが多いです。



小節とは

guitarchord-lab.com



この次の歌詞は、今暫定的に「君らと共に歩む路(みち)」になっているんですが、頭の中にあるメロディーだと、少し言葉数が足りなくなる感じがしたので、歌詞候補の中からハマりそうな言葉を探します。


探すのは、Go!と相性の良さそうな言葉で、浮かんでいるメロディーの音数に近い言葉。


この時は、考えたメロディーが8音だったので、そのくらいの文字数の言葉を探すと「周りを巻き込む強い力」というだいぶ文字オーバーしているけれどGoとの相性はよさそうな言葉があるので、この言葉を形成できないか考えます。

前半の「周りを」は最悪言わなくても分かりそうなので消して「巻き込む強い力」にすると10文字。

「強い力」を「パワー」にして6文字を3文字に変えると、全部で7文字。そこに「で」をつけて「巻き込むパワーで」にして8文字にしました。


こんな風にメロディーも歌詞も、ある程度の骨格を作ったら、参考曲を聴いて要素を引っ張り出したり、歌詞の意味をなるべく変えずに文字数を増やしたり減らしたり、骨格に沿って色んなアプローチをして肉付けをしてサビを完成させていきます。


コードを付ける

コードというのは和音で、いわゆる伴奏のようなものです。

例えば、起立!礼!のあの音がありますよね。



10 音楽の「起承転結」 「起立,礼」の和音


この時、頭を上げている時のコードは同じなんですが、礼の時のコードは違います。
これがコードの展開で、ここが全部同じ音だと動いている感じ、ストーリー感みたいなものが出にくいんですね。
曲というのは、このコードが動くことによって色んな展開を生みます。


サビのメロディーが完成したら、このコードというものを付けていきます。
ピアノやギターなど、和音が出せる楽器で付ける場合がほとんどです。


コードというのは、メロディーに対して1つじゃなく、何パターンか付けることができます。
この”何パターンか”というのが厄介で、まず超基本的なところは大体みんなおさえているんですが、それだともうやり尽くされている典型的なパターンすぎて、何も新しさがない退屈な曲になりやすいんですね。
だから、ちょっと捻ったコードを付けたりするわけなんですが、ここがわりと難しくて。
でもメジャーアーティストとかだと、ほぼ例外なくこの捻ったコード進行みたいなものは入れている気がします。


僕は作ったメロディーに対して付けたコードがなんか違うな、なんか物足りないな、もっと違う音が鳴ってる気がするんだよな、と思うことは多々あっても、もともとピアノをやっていたわけでもないので、その何か違うコードを探すのにとても苦戦したりします。
なので今もメロディーに対していい感じのコードを鳴らせるように曲を作りながら実践でトレーニングして少しずつ引き出しを増やしているような状態です。
このイクミンジャーも、やっているうちに「これは一体なんのコードなんだ?」「どういう理論だ?」となり、音楽理論の本やらネットやらを片手に作っていました。


コードの付け方
yugo-music.jp



作曲のスタイル


この辺から作曲のスタイルが分かれてきます。


メロディーだけを作る作曲ならば、ここから後のコードを付けたり、他の色んな楽器を入れていくアレンジの作業は、アレンジャーさんに任せるというスタイルなので、AメロやBメロのメロディーをサビと同様に作ったら一旦それで終了です。アレンジ後にメロディーの微調整はすることはありますが。


メロディーとコードだけは自分で付けて、アレンジは任せるというスタイルの人は、この後AメロやBメロのメロディーを作って、コードを付けて終了です。


メロディーもコードもアレンジも全部自分で完成させるスタイルの人は、まだ道のりは少し長いです。


本当は、アレンジの後に、ミックス(トラックダウン)とマスタリングという音を混ぜたり音の厚みを増す作業が入るのですが、それも自分でやるか、エンジニアさんに任せるかで分かれます。


作曲家に上下はないと思いますが、メロディーだけを作るよりは、アレンジやミックスまでをする方が作業量だけで見たら圧倒的に多いです。だから海外の人がコライトするのはわかる気がします。


ちなみに僕の友人がメロディーだけで欅坂46の作曲に参加したと書きましたが、彼はまずそもそも歌が非常に上手いのと、作詞家として事務所に所属していたので、もともと周りにいいアレンジャーがいたりする関係や環境があってそういう参加の仕方ができていますが、普通「いいメロディー作れます」と言ってメロディーを口ずさむだけでは作家事務所には多分入れないので、なんだプロ楽勝じゃん、ということでは決してないのでそこはお気をつけください。


最後に

こうやってできた曲がこれです

撃笑戦隊イクミンジャー



うまくまとまりきらなかった所も沢山ありますが、メロディーの作り方やコードの付け方についてはまた別の記事などで少しずつご紹介できればと思います。

果たしてこの記事を全て読んで頂いた方がいるのか分かりませんが、曲を作るということが少しでも伝われば、また自分でも曲作りやってみたいなと思ってもらえれば光栄です。

あと、もしもこれを読んで曲作りについて本当にトライしてみたいという方がいたら、今月の末から新たにマンツーマンのミュージックスクールで講師もするので、そこに問い合わせをして頂ければと思います。メインは、ボーカルレッスンなんですが、初心者の方だったら曲作りもある程度までお教えできるかと思います。
まだ受け付け始まっていないので、始まったらお知らせします。


最後まで読んで頂きありがとうございました!

f:id:ishikawayujin:20191019165758j:plain