ハチワレ処

御転婆大使館ノスケのブログ

曲の作り方②〜サビを考える〜

前回までの話


・曲は誰でも作れる時代になっています(売れる曲とは言ってない)

・自分のため、自分たちのためだけの濃い曲が増えても面白そう

・曲作りを身近に感じてもらって自分で作れる人を増やしたい

・アイドルからの実際の依頼曲をもとに作り方を解説してみます

・まず歌詞の素材を集めます


・そこから歌詞になりそうな言葉をピックアップします


サビの言葉を決める

では続きです。

歌詞になりそう言葉をピックアップしたら、この段階で、今度はサビになりそうなワードを暫定的に選びます。
別にサビから必ずやる必要はないんですが、僕の場合、基本的に土台から作りたい人なので、曲の柱になるサビから作ります。


僕が自分でサビを作る時まず基準にするのは

 

  1. 主張、疑問などメッセージ性のあるもの
  2. 語感のいいもの(言いたくなるもの)
  3. 他の曲を連想しないもの

 


などです。

基本がこれというだけで、実際はどんなフレーズでもサビにしてしまうことはできるんですが、多分上の3つで考えていくと、より"サビっぽさ"は出やすい気はします。

 

それぞれの解説です。


1.主張、疑問などメッセージ性のあるもの

曲の核、軸になりそうな言葉で、一番伝えたいことや、歌いたいこと、投げかけたいことなどです。


<例>

愛にできることはまだあるかい
(RADWIMPS/愛にできることはまだあるかい)


ナンバーワンにならなくてもいい 元々特別なOnly one
(SMAP/世界に一つだけの花)


明日はきっといい日になる
(高橋優/明日はきっといい日になる)


さあ がんばろうぜ!
(エレファントカシマシ/俺たちの明日)


サヨナラは悲しい言葉じゃない それぞれの夢へと僕らを繋ぐ YELL
(いきものがかり/YELL)


1人じゃないから 私が君を守るから
(AI/Story)

 

 

2.語感のいいもの(言いたくなるもの)

キャッチコピー感みたいなものです。
自分が言いやすいかどうか、言いたくなるかどうか。結構センスとか好みとかその人のカラーなんかがここで出るかもしれませんね。
でも作詞家とかコピーライターとかマーケターみたいな人は、どういう音がどういう心理効果を生むみたいな心理学系のところも取り入れて作っているとは思います。
僕もどうしても出ない時はなんとなくその辺も参考にしながら言葉を探したりはしますが、基本的には自分が言って楽しい、面白いワードにしています。
あとキャッチコピー感が強い言葉は、そのまま曲のタイトルになってることも多々あります。

 

<例>

C'mon baby アメリ
(DA PUMP/U.S.A.)


「完全感覚Dreamer」がボクの名さ
(ONE OK ROCK/完全感覚Dreamer)


残酷な天使のテーゼ 窓辺からやがて飛び立つ
(高橋洋子/残酷な天使のテーゼ)


チョコレイト・ディスコ
(perfume/チョコレイト・ディスコ)


パプリカ 花が咲いたら晴れた空に種を蒔こう
(Foorin/パプリカ)


握ったメッセージ that's rising hope
(LiSA/Rising Hope)

 


3.他の曲を連想しないもの

いわゆるオリジナリティです。
もう今やメロディも歌詞も探せばどこかに絶対似たようなものが見つかるんじゃないかというくらい音楽に関しては、というかどの分野でもネタ切れみたいな状況ってなってきている感じもありますよね。
それでもやっぱりあまりにも馴染みのありすぎる歌詞と同じ言葉を使うと絶対に印象負けしてしまって、どれだけ他のところに拘って頑張っても、たった一箇所のせいでパチモンという印象しか持たれない悲しい運命を辿ることになります。なので、特に顔になるサビの言葉は、パッと聴いて他の有名曲が出てこないようには気をつけます。

例えば上に挙げたようなキャッチコピー系の

「C'mon baby 」とか「残酷な天使」とか「Rising hope」とかをサビにポン、とはもう持って来られない感じはあります。


ただこれもあくまで基本的にはなので、あえてそういう言葉を使って、元のイメージと真逆の曲調にするとかオマージュするとかも全然ありだとは思います。でも、あえて使ってる感じの"あえて"感を出さなきゃいけない難しさがあります。

 

上記の3つの視点を持って、サビは


・Let's go!君らと一緒に歩む路(みち)

・Here we go!僕らは共に進むのさ


この辺りを中心に使わせてもらうことにしました。
ちなみにこの言葉は、今っぽいクールな曲調とかだと、ストレートすぎてちょっと合わないかなという感じもするんですが、カッコつけすぎず、ひょうきんな所も売りの加藤さんにはハマる気がしたので、迷いなく選びました。

 

サビをなんとなく口ずさむ

ある程度サビの背骨になりそうな言葉を決めたら、とりあえずそれを口ずさみます。慣れると頭の中だけでできると思います。

※この辺から具体的な思考の内容が入ります


まずサビのLet's go!とかHere we go!
が頭にくるイメージで、なんとなくこの言葉を言ってみます。


  レッツ! ゴー!とか

 

  レツゴウ!!とか

 

  レーーツゴゥ!!とか。

 

言い方の違いを文字だけでなんとか伝えようと試みていますが伝わっていますでしょうか。
でなんとなく手で速めのリズムを取りながら繰り返します。

 

  トントントントン レッツ!ゴー!

 

  トントントントン レツゴウ!!

 

  トントントントン レーーツゴゥ!!

 

そうすると、1回だけでは物足りない感じがしてきます。なんだか、2回以上言いたい気分です。
なので、とりあえず言いたいように言ってみます。

 

  トントントントン レッツ!ゴー!(ウン)レッツ!ゴー!

 

  トントントントン レツゴウレツゴウ!レッツゴー!

 

  トントントントン レーーツゴゥ!!(ウン)レーーツゴゥ!!

 


もう付いてこられてないですよね。
この辺で文字での音表現は控えます。

 

さて、繰り返しているうちに「あーなんだかスーパー戦隊っぽい雰囲気だなぁ」と感じてきました。
戦隊系の曲はまだやっていないし、加藤さんがスーパー戦隊になるのは面白そうだ。
よしではちょっと戦隊モノの資料を集めよう!!



と、まだサビも決まらない状態で、とりあえず参考になりそうな曲が思い浮かんだのでまず片っ端から聴いていきます。

 

参考曲を探す

スーパー戦隊モノっぽいなと思っていながら、戦隊モノの曲を詳しく知っているわけでもなく、僕が口ずさめたのはどこかで聴いた「電子戦隊デンジマン」(1980)と「忍者戦隊カクレンジャー」(1994)のサビだけだったので、まず”ぽい”と思っているスーパー戦隊の過去のテーマ曲をネットで漁って全部さらっと聴いていきます。
仮面ライダー系も調べたんですが、こちらは普通にポップスアーティストの曲が主題歌になっている感じで、ちょっと”ぽさ”に欠けたので、ゴレンジャーなどのスーパー戦隊縛りでいくことにしました。
そして片っ端から聴いていきながら、よさそうなイメージの曲はメモします。

 

僕のこの時のメモだと


ジェットマン
デカレンジャー
マジレンジャー


が書いてありました。

 

そこから更に絞った曲を歌詞を見ながら聴いて、曲の長さや構成、歌詞の感じ、使っている楽器などをざっくり確認して、こんな曲を加藤さんが歌っているという想像を膨らませます。
で行けそうだなと思ったので、この段階で一度加藤さんに「スーパー戦隊みたいな曲どうでしょ?」と確認を取ります。
ここで戦隊モノはちょっと違うかもしれませんとなれば、一旦白紙にして、再度、レッツゴーのメロディーを口ずさむところから始めます。
今回は、いいですね!と即答だったので(加藤さんは提案にNG出したことないですが)、更に、加藤さんが見ていたものとか知ってる曲はありますか?と戦隊モノの曲メドレーを送って確認したところ、「マジレンジャーは知ってたし曲が好きです!」とのことで、丁度僕がメモしていたのもマジレンジャーだったので、ここでマジレンジャーが参考曲としてほぼ確定します。


この辺の材料集めみたいなことをやるとやらないとでは全然違います。
そもそも、なんにもない真っさらなところから音楽を生み出すってほぼ不可能で、みんなどこかで何かしらを聴いて、それが自分の中に蓄えられて、別の何かと掛け合わせたりして新しい音楽ができていると思うので、材料は多いに越したことはないと思います。

”加藤さんはマジレンジャーが好き”

これは曲を作る上で相当太い軸になるので、これを軸に、色々と絡ませてくいく感じになります。


※加藤さんの場合、ヒム子ーズとかヒム子組.comをやっていて、そのユニットがそもそも結構パクリ芸というか、元々ある曲やアイドルのパロディ要素を入れる面白さがあるので、それを地続きな感じにできればいいなと思ってパロディー要素を多めに取り入れているので、この材料集めを特に多めにやることは多いです。



参考曲を元にサビの骨組みを作る

参考曲が見つかったので、改めてサビに戻って、背骨となる部分を作ります。


スーパー戦隊のオープニング曲も70〜80年代と90年代、2000年代とかでかなり変わってくるんですが、お家芸的な戦隊モノのパターンとしては、その戦隊の名前がサビの頭か最後に入ります。
最後に〇〇戦隊、〇〇ジャー!が一番多いパターンだと思います。ここに戦隊っぽさがあるので、これはパロディー要素として取り入れようと決めて、まずそこを作ってしまいます。


ジャーはもうシンプルに”カトウジャー”か”イクミンジャー”で、カトウジャーはちょっと語呂が悪い感じがしたので、イクミンジャーに。
そこはすんなり決まったので、その前につける戦隊名を考えます。



爆笑戦隊
スマイル戦隊
笑撃戦隊
妙チキ戦隊



など考え付く限り書き出します。


戦隊がつけばわりとどれも悪くない感じにはなるんですが、イクミンジャーの発音が、"イ"や"ミ"や"ン"で口をあまり開かず少し弱めなので、最初の音は破裂音とか濁点がつく硬そうな存在感のある音にして、途中イクミンで柔らかくなって最後にジャーでまた少し締める、みたいな雰囲気にすることにしました。


そうすると、スマイル戦隊とか妙チキ戦隊は一旦除外になります。


笑撃戦隊もよかったんですが、最初がショでやはり少し弱いのと、ネット検索すると笑撃戦隊という芸人さんがいたので、一応ここも避けます。


爆笑は、なんとなく戦隊モノの潔いカッコよさみたいなものが薄れる気がしたのと、お笑いのイメージが強すぎる、あとは歌詞がそこまで爆笑に寄せられているものではないので、これも除外しました。


でも加藤さんのキャラクター的に笑の字が入るのは捨てきれなかったので、笑撃ではなく反対にして濁音を先にする"撃笑"にしました。

造語ではありますが、激走戦隊カーレンジャーというのもあって、音の響きも近くナチュラルさはありつつ、字で意味もなんとなく分かります。
更に、衝撃の文字を笑撃に変えただけでは飽き足らず反対にしてしまう衝撃感を出してしまった、と自分である程度強引に理由づけして納得させます。

 

ということで、

  • マジレンジャーが参考曲
  • "撃笑戦隊イクミンジャー"という戦隊テーマソングにする
  • サビの最後は「撃笑戦隊、イクミンジャー!」で締める
  • サビの頭はLet's go!Here we go!みたいなイメージ

 
という骨格ができたので、これを元に改めてサビのメロディーと歌詞を細かく考えていきます。


そろそろ飽きているかもしれませんが、次で最後です。ついて来てください。(謎の使命感)


と思ったんですがやはり長すぎたので次回に回します。

読んで頂きありがとうございました。